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サイレントエモーショナルサマー
第22章 gelosia
「なんなんだよ、お前」
「……別に」
「別にって。お前さ、」
「浩志だってなんか今週ずっと変じゃない。なんなの」
「俺は、なんだ」
「は?」
「お前にとって俺はなんなんだよ」
「浩志は、友達だよ」
「……俺はお前をそんな風に思ったことは一度もない」

じっと私の目を見つめ言うと、手を振り払ってフロアへ戻っていく。なにそれ。なんだそれ。今までそんなこと言わなかったくせに。ならば、どうして私とつるんでいたのだ。浩志にとっての私は楽で居られる友人ではなかったのか。

藤くんの言った通りだった?友達だと思っていたのは私だけだったのか。

呆然と立ち尽くしていると鞄を手にした浩志が再び私の前に立った。

「お前が変わっていくつもりなら俺も変わる。とりあえずこれから社外でもう戻らねえから。お前の休み明け時間作ってくれ」
「待ってよ。なんで、急にそんなこと…」
「俺は充分待った。これ以上は待てない。まじで時間ねえから行くわ」
「ちょ、ちょっと…!浩志!」

わしゃわしゃと私の頭を掻き撫でてエレベーターに乗り込んでいく。待ったって、どういうこと?彼は私のなにを待っていたのだろう。

ふらふらとデスクに戻ってからも上手く仕事に集中することが出来なかった。

いけないいけない。休みに入る前に業務の引き継ぎ書を残しておかないといけないし、倉庫の作業だって1週間なにもしないで済むように準備しておかなければならないのに。

何故、今になって浩志はあんなことを言ったのだ。彼に、なにがあったのだろう。私がなにか言ったのか?それとも、藤くんだろうか。いや、藤くんは多分そんなことをする子じゃない筈だ。

― あー!もう!

がたんと音を立てて立ち上がり部長の方を振り返る。私の勢いに驚いたらしい部長にコンビニ行ってきます、と告げると、ついでにリンゴジュースを買ってきてくれと言われた。実にゆるい部署だ。

逃げるようにコンビニに駆け込んで部長ご所望のリンゴジュースに加え、煙草とライターを買った。会社に戻るが、フロアへではなく喫煙所へ向かった。幸いなことに誰も居ない。
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