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サイレントエモーショナルサマー
第22章 gelosia
「……なんで今になって、俺はお前を友達だと思ったことは一度もないなんて言ったのかな」
「え?告白されたんじゃないんですか?そう、言われただけ?」
「うん。お前にとって俺はなんだって言われて、友達だって言ったら、俺はそんな風に思ったことは一度もないって」
「へえ。そうですか」

聞き慣れない低い藤くんの声に顔を上げると、藤くんはなんだかほくそ笑んでいるように見えた。なにを考えているのか分からない。訝しんで藤くんのシャツに手を伸ばす。

数分前には白状するか迷ったことをぺろっと言ってしまった。ああ、言っちゃったよ、と思いながらも口にしたことで胸を占拠しようとしていた苛立ちを完全に追い出すことが出来たのを感じる。

「ごめん、藤くん。話聞いてくれてありがとう。苛々してた所為で作業が遅れ気味なので、君も早く仕事に戻ってください」
「え?え?ちょ、なんですか、その切り替え」
「分かんない。でも、私は今、無性に君と頭空っぽになるまでセックスがしたいです。だから早く仕事終わらせたいの」
「志保さんまで逃げるんですか」
「逃げる?別に逃げじゃないよ。欲求に従ってるだけ」
「ふうん。まあ、そっちの方が俺にとっては好都合ですけど」

意味の分からないことを言って、ちゅっと頬にキスをする。残業はほどほどに、と小さく言うと髪を撫でてから倉庫を出ていく。

別に、逃げじゃない。藤くんとのセックスは頭の中がどろどろに溶けるほど気持ち良い。それに、汗ばむ彼の肌に触れていると胸の奥底にあたたかな熱が満ちる。今は、その熱に沈みたいのだ。その欲求は決して逃げなどではない。
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