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サイレントエモーショナルサマー
第22章 gelosia
出来る子だな、と思う。藤くんはいちいち出来る子だ。しかもさり気ない。ここで、きゅんとくることが出来れば私にも普通の感性が戻ってきてくれたと判断できるが、私はただただ感心するばかりだ。

「藤くん、やっぱり軽くシャワー浴びていい?」
「どうぞ、ご自由に。もう自分の家だと思ってください」
「いや、流石にそこまでは」
「言っておきますけど、俺、志保さんがもう出ていく!って言うまでほっぽり出すつもりないですからね」

その方が安全だし、と欠伸交じりに言う。どうやら藤くんはもうおねむらしい。もう一度、彼の頬にキスをして寝間着を片手に浴室へと向かった。

Tバックを購入してからというもの藤くんの中に謎のブームが巻き起こっている。今日はどれかな、とTシャツとハーフパンツの間をそっと窺う。

ここ数日で私の下半身を守る布の選択肢は三つになった。ちなみに選択権は私にない。おみくじのようで面白いので基本的に用意されたものを穿くようにしているが、Tバックにはまだ慣れそうもない。

本日のパンツみくじは大吉。普通のレディースのショーツだ。

藤くんは出来る子だが、奇妙なところがある。それは結構面白い。ふふっと笑って簡単にシャワーを浴び、寝る支度を整えて戻るとベッドに横になった藤くんはスマホをいじってなにやら楽しそうにしている。

「なに見てるの?エロサイト?」
「……あのね、俺はエロは志保さんにしか求めてないんで」
「……反応に困るなぁ」

ベッドの縁に腰かけて藤くんの髪に触れた。くすぐったそうな顔をして口元を突き出す彼にキスを落とす。腕を引かれてベッドへと倒れ込む。

パンツみくじの他にもうひとつ、藤くんのブームがある。彼は私の身体から自分の愛用しているボディソープの匂いがするのがたまらないらしく、ぎゅっと私を抱き締めて暫く首元ですんすんと鼻を鳴らすようになった。
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