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サイレントエモーショナルサマー
第23章 vacanza
途端にどうしたら良いのか分からなくなって俯くと蝉の鳴き声ばかりだった公園に賑やかな子供たちの声が響き渡った。
近所の小学生だろう。五名の男の子たちがわっと駆けて熱いだろうに鉄棒の辺りに群がる。代わる代わる逆上がりの練習をする姿を見ながら、そういやチカは運動神経悪かったな、とぼんやり思う。
私がくすりと笑うと藤くんもそっと笑った。横顔を見れば彼の目は小学生たちに向いている。懐かしむようななにかを悲しむようなそんな顔に見えた。
「どうしたの?」
「あの、一番背の低い子居るじゃないですか。あの子見てると昔の自分思い出すなって、」
「ああ、確かにちょっと小さいし女の子っぽい感じだよね。でも、藤くん昔から大きかったんじゃないの?」
「俺、背伸びるの物凄く遅かったんですよね」
意外だ。身長の高い男性は子供の頃から抜き出て大きいものだと思っていた。
暫く小学生たちを見つめてから、藤くんが暑いし帰りますかと言った。帰りがけにもう一度コンビニに寄ってたくさんアイスを買って、彼のアパートへと戻った。