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サイレントエモーショナルサマー
第23章 vacanza
藤くんがオープンな人だということを忘れていた自分を責めた。にこりとしていた顔がにやにやに変化している。テーブルの下からそっと伸びてきた手が膝がしら触れて、きゅんと下腹部が疼く。いや、そこじゃないだろ、自分。
「昼間はそうやって澄ました顔してくるくせに夜には俺にデレデレな志保さんはめちゃくちゃかわいいです」
「だから、もういいから」
「あ、赤くなった。帰ります?帰って、デレデレになっちゃいます?」
「……怒るよ」
「怒った顔も好きですよ」
顔が熱い。手のひらで顔を仰ぐと藤くんはくつくつと笑う。ふと藤くんが動いたかと思うと、ちゅ、と頬に彼の唇が触れる。驚いて仰け反るとにんまり笑っている。
「変なところで照れる志保さんもかわいいです」
「……うるさい」
これといって意味もなく、私の顔をみるとどう思う?だなんて訊かなければ良かった。気恥ずかしさを誤魔化そうとアイスコーヒーのカップに手を伸ばしストローに口をつける。中身なんてすっかりなくなっていて、ずずっと音がするだけだ。
藤くんは上機嫌だ。照れてるんですか、と言いながらつんつんと私の頬をつついてくる。辞めてってば、とその手から逃れようとするとテーブルの上に置いてあった藤くんのスマホがぶーっと唸り出す。
「………」
彼はいつもかかってきた電話に私の前で応じる。時たま夜に電話がかかってくるが、相手は大体恭平くんか彼の大学時代の友人だ。それに反して私のスマホは全くもって鳴らない。
元々、私には電話をかけてくるような相手はチカと浩志しかいない訳で、チカは恐らく私が藤くんに所に居ると知っているから安心しているのか連絡を寄越さない。浩志はもう知らん。
「出ないの?」
問いかけると藤くんは光る画面を無言で私に見せた。長岡恭平、と名前が表示されている。
「恭平くんだよ」
「ここんとこ飲みの誘い断り続けてるんで今日こそ呼び出されそうな予感が」
「行っておいでよ」
「ちゃんと、ベッドで俺の帰り待っててくれます?」
「ソファーかもしんない」
「どっちでもいいです。俺が帰ったら、おかえりってキスしてくださいね」
言いながら、渋々といった様子で応答ボタンを押す。
「昼間はそうやって澄ました顔してくるくせに夜には俺にデレデレな志保さんはめちゃくちゃかわいいです」
「だから、もういいから」
「あ、赤くなった。帰ります?帰って、デレデレになっちゃいます?」
「……怒るよ」
「怒った顔も好きですよ」
顔が熱い。手のひらで顔を仰ぐと藤くんはくつくつと笑う。ふと藤くんが動いたかと思うと、ちゅ、と頬に彼の唇が触れる。驚いて仰け反るとにんまり笑っている。
「変なところで照れる志保さんもかわいいです」
「……うるさい」
これといって意味もなく、私の顔をみるとどう思う?だなんて訊かなければ良かった。気恥ずかしさを誤魔化そうとアイスコーヒーのカップに手を伸ばしストローに口をつける。中身なんてすっかりなくなっていて、ずずっと音がするだけだ。
藤くんは上機嫌だ。照れてるんですか、と言いながらつんつんと私の頬をつついてくる。辞めてってば、とその手から逃れようとするとテーブルの上に置いてあった藤くんのスマホがぶーっと唸り出す。
「………」
彼はいつもかかってきた電話に私の前で応じる。時たま夜に電話がかかってくるが、相手は大体恭平くんか彼の大学時代の友人だ。それに反して私のスマホは全くもって鳴らない。
元々、私には電話をかけてくるような相手はチカと浩志しかいない訳で、チカは恐らく私が藤くんに所に居ると知っているから安心しているのか連絡を寄越さない。浩志はもう知らん。
「出ないの?」
問いかけると藤くんは光る画面を無言で私に見せた。長岡恭平、と名前が表示されている。
「恭平くんだよ」
「ここんとこ飲みの誘い断り続けてるんで今日こそ呼び出されそうな予感が」
「行っておいでよ」
「ちゃんと、ベッドで俺の帰り待っててくれます?」
「ソファーかもしんない」
「どっちでもいいです。俺が帰ったら、おかえりってキスしてくださいね」
言いながら、渋々といった様子で応答ボタンを押す。