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サイレントエモーショナルサマー
第23章 vacanza
今、私の脳内にあるのは如何にしてこの状況を切り抜け、自宅でUSBを探すのか、である。

「ちょ、ちょっとさ探し物したいからさ、駅前のカフェで待ってていただけませんかね。そこで話をしましょう」
「家の前に居るのにわざわざカフェまで行く意味が分かんないんだけど」
「お前の部屋もあんだろ。とりあえず部屋に上げろよ」

でしょうね!でも、自宅に隼人と晶を上げるわけにはいかないし、隼人の部屋は危険だ。

神様、ちょっと酷すぎやありませんか。普段信じてないのに神頼みなんかしたからですか。こうなったら今後は貴様を徹底的に呪ってやる。

「しーちゃんが俺と付き合うの無理だっていうなら諦めるよ。でもさ、しーちゃんなんも言ってくれないじゃん、検討するなんて言われたら俺だって可能性あると思っちゃうよ」
「うん、それは私が悪かった。本当にごめんなさい。あと、今後もごめんなさい。隼人とお付き合いは出来ません」
「それは、なんで?俺のなに見て判断した訳?俺らさ、身体以外のこと殆ど知らないじゃん。それなのに今後がないなんてなんで言えんの?なにも見てないのに」
「つーか、お前何者なんだよ。今、こいつと話してんのは俺だろ。突然現れて邪魔すんなよ」

ぐいぐい詰め寄ってくる隼人から逃げようと後ずされば、晶に腕を掴まれる。隼人は私が無理だと言えば諦めると言ったくせに、自分を見る前から判断するのは違うだろ、という。確かに隼人の言わんとしていることは分からんでもない。

だが、私は今、いっぱいいっぱいなのである。どうやったらもう少し自信を持って藤くんと向き合えるのかとそればかり考えているの中で、浩志には友達だと思っていないと言われ、晶には今の私が好きだと言われ、隼人にも詰め寄られている。

逃げ続けてきた私に上手な恋が出来る筈もなければ、この想定外の状況を打破する術もなかった。

「とりあえずさ、1回くらい俺とデートしてよ」
「待てよ。んなこと必要ねえだろ」
「いや、つーかあんた誰?見た感じしーちゃんより年上だよね?言っとくけどしーちゃん結構変な女だし、あんたの手に負えないと思うけど」
「変な女どころか抓られて喜ぶ変態女だっつーのもよく知ってるよ。ガキは消えろ。俺は志保にしか用がない」

誰でもいいから助けてくれ。ツケよ、回ってき過ぎじゃないですか。
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