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サイレントエモーショナルサマー
第23章 vacanza
「言わないならいつまでもそのままだぞ」
「ほんっとにくそ野郎!どいつもこいつも!」

ぎゃんぎゃんと叫ぶ私を無視して服を着始めた晶は我が物顔で煙草を吸い始める。それを見た隼人も服を着て、ベッドの縁に腰かけた。

「なあ、志保。ほれ、言ってみ」
「だから言わないっつってんでしょ!まじで警察に突き出してやる!」
「…益々外せねえな」
「つーか、お楽しみ中のとこあれなんだけど、俺ちょっと用事出来ちゃった。しーちゃんの部屋、隣だし後はそっちで話しつけてくんない?」
「くっそ!隼人のばか!余計なこと言うな!」
「へえ。どっち?」
「角部屋。506号」

スマホを操作していた隼人の言葉で晶はにやりと笑う。ちくしょう。部屋番号までバレた。ベッドから立ち上がって財布や煙草の箱を手にした隼人は、はやく、と言いたげに晶を見ている。

「……こいつこれ外した瞬間警察駆け込みそうだしな」
「当たり前でしょ!くさい飯食ってこい!」

咥え煙草で思案顔の晶はうろうろと部屋の中を彷徨ったかと思うと、見つけた灰皿に煙草を押し込んでから、とりあえずといった風にとっ散らかした私の服や鞄をひとまとめにする。

それから隼人に向かってぼそぼそとなにか言うと、隼人は頷いて私の視界から去った。晶はしれっと私の鞄を物色し始める。

「触らないでよ!早く外せっつーの!」
「お、あった。なんだお前このキーケースまだ使ってたのか」
「紙袋、これでいいっしょ。あと、これ、予備のタオルケット」
「は?ちょっと、なに考えてんの?」
「とりあえず、お前の部屋に運ぶ」
「いや、そんなんいいから早く外してよ!」

私の叫びはやっぱり無視。晶は隼人から受け取った紙袋に乱雑に私の鞄と衣類をぶち込むとこちらに寄ってきて、ばさりとタオルケットを私の身体にかけた。

「さすがに素っ裸で外出たら誰に見られるか分かんねえからな。俺、頭いいかも」
「よくねえわ!こんなことしてる時点でじゅーぶん頭悪いから!」
「なあ、まじで、俺もう出ないとなんだけど」
「わーってるよ。志保、舌噛むなよ」
「えっ?きゃっ!ちょっと!下ろしてよ!」

タオルケットで包んだ私の身体を簡単に担ぎ上げ、紙袋片手に晶は部屋を横断する。そこまで体格は変わらない筈なのに意外と力がある。いや、感心してる場合ではない。
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