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サイレントエモーショナルサマー
第23章 vacanza
「ごめん……浩志、少し時間ちょうだい」
「時間って…お前はもう藤と、」
「藤くんとは…その、お試しというか…えっと…」
「じゃあ、なんだ。他にも試してるやつがいてあんなことされてたのか」
「……そ、そのような解釈で良いかと…」
苦し紛れに言うと浩志は勢いよく顔を上げた。なんとも表現しがたい表情で私を見上げている。
「た、試す?浩志も、」
「……はあ?」
「ごめん、いま、やけっぱちで言った」
「ばかじゃねーの。ふざけんなよ。俺だってそりゃヤりてえよ。あんなもん見せられて…ただでさえお前のこと考えて抜いてたんだぞ!何度もな!でも、俺は藤とは違う。先に身体どうこうしてなんて絶対にしない」
苛立たしげに息をついて私の身体から離れると立ち上がる。律儀に、煙草吸っていいか、と問われ、いいよ、と答えた。晶と同じ銘柄、同じ煙の匂いなのに浩志のそれは何故だか心地よい。
ソファーに座った彼の前に灰皿を出してやりながらなんとなく隣に座った。浩志は嫌がるかと一瞬思ったが、そんなことはなく、今までのような距離だった。
ああ、きっと、これが最後だ。家を出たら次に会う時は浩志とは今までのように接することが出来ない。
「……ちゃんと寝れてるか」
「うん」
「飯、食えよ。料理はすんな。買って食え」
「うん」
「しんどくなったら家来いよ。俺はなんもしないし、キッチンで寝るし」
「うん、ありがとう」
煙草が、短くなっていく。じりり、じりりと端から灰になっていくのを無性に阻止したかった。
時間をかけて煙草を一本吸い終えると、浩志はなにも言わず立ち上がった。行かないで。待って。そんな思いで彼へ手を伸ばすが触れることは出来ない。
「…あ、データ、待ってUSB探すから」
再び泣き出しそうになったのを隠すように早口で言ってクローゼットの前へ向かった。古い鞄を引っ張りだして中を見てみると浩志が求めていたUSBが内ポケットに入っていた。
「時間って…お前はもう藤と、」
「藤くんとは…その、お試しというか…えっと…」
「じゃあ、なんだ。他にも試してるやつがいてあんなことされてたのか」
「……そ、そのような解釈で良いかと…」
苦し紛れに言うと浩志は勢いよく顔を上げた。なんとも表現しがたい表情で私を見上げている。
「た、試す?浩志も、」
「……はあ?」
「ごめん、いま、やけっぱちで言った」
「ばかじゃねーの。ふざけんなよ。俺だってそりゃヤりてえよ。あんなもん見せられて…ただでさえお前のこと考えて抜いてたんだぞ!何度もな!でも、俺は藤とは違う。先に身体どうこうしてなんて絶対にしない」
苛立たしげに息をついて私の身体から離れると立ち上がる。律儀に、煙草吸っていいか、と問われ、いいよ、と答えた。晶と同じ銘柄、同じ煙の匂いなのに浩志のそれは何故だか心地よい。
ソファーに座った彼の前に灰皿を出してやりながらなんとなく隣に座った。浩志は嫌がるかと一瞬思ったが、そんなことはなく、今までのような距離だった。
ああ、きっと、これが最後だ。家を出たら次に会う時は浩志とは今までのように接することが出来ない。
「……ちゃんと寝れてるか」
「うん」
「飯、食えよ。料理はすんな。買って食え」
「うん」
「しんどくなったら家来いよ。俺はなんもしないし、キッチンで寝るし」
「うん、ありがとう」
煙草が、短くなっていく。じりり、じりりと端から灰になっていくのを無性に阻止したかった。
時間をかけて煙草を一本吸い終えると、浩志はなにも言わず立ち上がった。行かないで。待って。そんな思いで彼へ手を伸ばすが触れることは出来ない。
「…あ、データ、待ってUSB探すから」
再び泣き出しそうになったのを隠すように早口で言ってクローゼットの前へ向かった。古い鞄を引っ張りだして中を見てみると浩志が求めていたUSBが内ポケットに入っていた。