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サイレントエモーショナルサマー
第24章 guarigione
◇◆
目が覚めたと同時に身体の重さに気が付いた。顔はなんだか熱く、気持ちが悪いのに身体はだるく寒気を感じる。
寝返りを打ってみるといつも隣にあった筈の藤くんの姿がない。まだ微睡む目を見開いて冷えたシーツに手を伸ばす。
藤くんが居ない。嘘だ。見捨てられた?そりゃそうか。鈍い頭が静かにパニックに陥る。だるい身体を叱咤してベッドから這い出ると閉じていた居室のドアが開いた。
「あ、目、覚めました?」
「藤くん…」
「どうしたんですか?そんなとこで座り込んで」
「藤くんが居なくなったかと思った…」
ベッドの脇にへたり込む私の傍までくると、バカな人、と微笑む。いいよ、もう、バカだもん。とっくに認めてるよ。伸ばされた腕に縋りつくと私の身体を優しく引き上げてベッドに戻してくれる。
「身体、だるくないですか?少し熱があるみたいだったから…コンビニでゼリーとか買って来たんですけど食べられます?」
「…いらない」
「ダメです。はい、みかんかももか選んでください。ま、みかんでしょうけど」
「……みかん」
「それ食べて、もうちょっと寝ててください。俺、キャンセルとか手続きしてこないとなんで」
水を少し飲んでから渋々みかんのゼリーを食べ始めると藤くんは私の背中を撫でてから立ち上がった。彼の発言に目を瞠って、彼を見上げる。
「なんで…えっと、え?」
「無理して行ってもいいことないですよ。また別の機会にしましょう」
「嫌だ…待って、私、大丈夫だよ。熱ないもん」
「確かにそんなに高くはなさそうでしたけど…」
「……藤くんと旅行いきたい」
「そりゃ俺も行きたいですよ」
熱があるのかどうか定かではなかったが、いつになく身体がだるいから恐らくあるのだろう。藤くんは私を気遣って旅行を取り止めるつもりのようで、私はそれを避けたかった。