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サイレントエモーショナルサマー
第24章 guarigione
今は結構良い雰囲気と言うやつではなかったか?

不穏な気配を察し、藤くんの腕から逃れる。ベッドの隅まで逃げて体育座りになると、にこにこと微笑んだ藤くんがベッドに乗り上げ、距離を詰めてくる。
しまった。壁際に逃げたのは失敗だ。

「あ、荒療治必要なくないかな?昨日で気付いたし…やっぱり藤くんとが気持ち良いよ、ね」
「いいですか、志保さん、昨日あなたがしたのはセックスではありません。合意の上じゃないでしょう。気持ちが追いついてないんだから気持ち良い筈がありません」
「昨日はほっとしたって言ってたじゃない」
「志保さんが俺が嫌がりそうなことしたくないって思ったことにほっとしたんです。ゴールはそこじゃありませんよ、もう俺以外の人とはセックスどころかキスもしたくないってとこまでが俺の設定したゴールです」
「勝手に設定されても困ります」
「あのね、普通はそういうもんであって設定する必要ないんですよ」
「くっ…確かに…」

正直、キスは藤くんとしかしたくない。だが、セックスはそうではない。隼人と晶とは二度としたくないが、諸々の私の中の基準をクリアした人が目の前に現れて、尚且つ欲求不満であればすると思う。

そうだ、今は藤くんが居るから欲求不満ではないのだ。だから別に今まで程積極的に他の人とセックスをしたいとは思わない。

しかし、藤くんにそれを言うべきではないだろう。欲求不満じゃないから、なんて言えば、荒療治がお好きらしい藤くんは、じゃあ俺は暫く志保さんとセックスしません、と言いそうな気がする。彼は我慢できる男だ。

藤くんが傍に居なくなってしまうのは嫌だ。それに、藤くんとキスが出来なくなるのもセックス出来なくなるのも嫌だ。結局、私は彼に身体を求めているだけなのだろうか。

「…もうちょっと水分取ってまた横になってください。無理して眠らなくてもいいんで。旅行、行きたいでしょう」
「ん…話してちょっとすっきりしたからまた寝れば大丈夫だと思う」
「なら良かった。俺はソファーに居ますから、ね、居なくならないから安心してください」
「ありがとう」

よしよし、と髪を撫でてベッドから降りていく藤くんを尻目にいくらかすっきりしたような身体を再び横たえた。そっと藤くんの方へ視線をやると彼は言葉通りソファーに深く沈み込んでこちらを見る。にこりと微笑んで、おやすみなさい、と言った声はとても優しい。
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