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サイレントエモーショナルサマー
第24章 guarigione
◇◆
ぱちりと目を開いた時、部屋は真っ暗だった。眠る前はだるかった身体が軽くなっている。おいおい、自分、結構ちょろいな。呆れ半分の息をつき、のそりと起き上がる。
暗闇に慣れた目で室内の様子を探る。藤くんの気配がない。またコンビニにでも行っているのだろうか。
目が覚めた時、藤くんが傍に居ないというのは思いの外、寂しい。だって、彼はいつも私の隣で私が目覚めるのを待っていてくれた。
電気を点ける気になれず、暗い中手探りでソファーに移動し、座り込んだ。藤くんはどこへ行ったのだろう。
しゅんとしょげていると玄関の鍵を開ける音がする。藤くんが帰ってきた。そりゃここは彼の自宅であって、彼が帰ってくるのは当たり前のことなのに、なぜだかそれが無性に嬉しい。
廊下の電気が点いたのと同時にソファーから飛び降り、駆け足で廊下へ向かった。サンダルを脱ぐ藤くんの姿が視界に入る。
「おかえり」
駆け寄って、抱き着く。驚いたような声をあげた藤くんは、よしよしと私の後頭部を撫でながら口を開いた。
「これですよ、これ。俺、昨日これして欲しかったのに、土下座だもんなぁ…」
「はは…すみません」
「顔色、良さそうですね。身体、どうですか?」
「今から焼肉食べたいくらい元気」
「…分かりづらいなぁ」
多分、今の藤くんは呆れ顔。彼の胸元に頭部を押し付けているから見えないけれど、きっとそう。彼は私が満足するまでこのままで居てくれるようで、身体を引きはがすことなく、ゆったりと髪を撫でてくれる。
「どこ行ってたの?コンビニだけ?」
「………」
暫くぎゅっと抱き着いたままでいてから、顔を上げて問うと藤くんは私の目をじっと見つめて押し黙った。足元にはコンビニの袋が無造作に置いてある。
「え、なに。言えないとこ行ってた?」
「もしかして、寂しかったんですか?」
「ん?」
「目、覚めて、俺が居なくて寂しかったんじゃないですか?」
どきり。何故、分かった。途端に恥ずかしくなって再び彼の胸に額を寄せて表情を隠した。ふうん、と意味深に呟いて、かわいいなぁもう、と抱き締め返してくれる腕が熱い。