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サイレントエモーショナルサマー
第24章 guarigione
「こういうかわいいことは俺にしかしちゃダメですよ」
「………他にする相手いないよ」
「寂しくなって中原さんに抱き着いたらダメですからね」
「う、ん…」
「俺はこんなデレデレでかわいい志保さんを中原さんにだけは見せたくないです」
「べ、別にデレておりません…」
「デレデレじゃないですか。寂しくて抱き着いてくるなんて1か月前の志保さんからは想像できません」
「もう藤くんにくっつくの辞める」

むっと藤くんの顔を見上げ、逃げようとすると目尻にちゅっと口づけられた。そこできゅんと来たのはやはり下腹部で、そこじゃないだろ、と自分に呆れる。

藤くんのシャツをちょんと引くと今度は頬にキス。違う。藤くんも、そこじゃない。悔しくなって唇を奪おうとすると彼は頭部を引いて逃げた。

「ケチ」
「じゃ、くっつくの辞めるって言ったの撤回してください」
「………」
「じゃないと、キス、しませんよ」

藤くんの親指がじりじりと私の唇をなぞる。ぞくぞくして腰が抜けそうだ。薄く口を開いて藤くんの美しいアンバーを見つめる。口の中に入ってきた親指が歯を撫で、歯列を割る。ちょこっとだけ入ってきた親指に舌を絡めると、悪戯を咎めるようにきゅっと押さえつけられた。ああ、ダメだ、セックスしたい。藤くんにどろどろに溶かして欲しい。

「ほんとに、もう。すぐエロい顔する」
「藤くんが悪い」
「今日はしませんよ。また調子悪くなったらあれだし…旅行いっていつもと違う場所ってのもいいでしょ」

私の口から親指を引き抜いて、また頬へキス。くそう。興奮させたくせに今日はセックスなしな上に、前言撤回するまで本気で口にはキスをしてくれないらしい。

「前言撤回。藤くんの経典の効果が切れるくらいくっつく。だからキスして」

真っ直ぐ見つめながら言うと、藤くんの目尻に皺が寄った。そこへ手を伸ばして、お願い、と小さく言えばその声は彼の口の中へ吸い込まれていく。

甘い甘い、危険な毒。下唇を噛む強さも絶妙で、舌同士が絡み合うとつい下腹部は熱を持つ。
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