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サイレントエモーショナルサマー
第25章 viaggio Ⅰ
「藤くん、大丈夫、私、ムードとか重要視してないし、ね、行くだけ行ってみよ」
「これはあれですかね…特急で悪戯してた罰ですかね…」
「いや、ヘビーだな。大丈夫だって。ほら、いつもの荒っぽいポジティブどうしたの?」
なだめ賺して、何度も頬や耳にキスをして漸く藤くんがのそのそと服を着始める。これだけテンションの低い藤くんをみる機会はそうない訳で私としてはかなり面白いのだが、笑えば彼のプライドを傷つけるだろうと思ってその笑いをなんとか飲み込んだ。
コンビニに行くだけだからとブラジャーを着けずにTシャツを着ようとすると藤くんはそれは絶対ダメだと言った。その上、昨晩は私にTバックを穿かせたがったくせに彼のボクサーを穿けという。笑いを噛み殺し、私がふざけて買ったド派手なフルーツ柄のパンツを穿いてあげた。
驚くほどに街灯のない夜道を手を繋いで歩いた。まさかコンドームを買いに行くためだけに宿を出ることになるとは誰が想像できただろう。腹の底から面白くて仕方がない。
「笑い、堪えてるつもりかもしれないですけど堪えられてないですからね」
「うっそ。ごめん。だって藤くんがしょんぼりしてるの面白いんだもん」
「…くそ。やばいですまじで。張り裂けそう。出来るもんなら今すぐここで志保さんを押し倒したい」
「野外はノーサンクス」
「……分かってますよ」
幼く膨らんだ頬が可愛くて、繋いだ手をそっと振った。真っ暗闇の中煌々と光るコンビニが目に痛い。眩しさに顔を顰めながら店内に入りお目当てのものを探す。
「………ないね」
「だから言ったでしょ」
「小さいけど買っとく?」
「そんなのしたら一生イけないんで志保さん寝られませんよ」
「萎えないの?」
「俺は志保さんの裸だけで維持できます」
「……辞めとこうか」
恐ろしい。一晩中挿入しているつもりか。ぶるりと身震いをして意味もなくアイスを買ってコンビニを出る。
アイスを食べながら歩いて、どうしたもんかと頭を悩ませた。1回くらいナシでいいよ、と言ったら藤くんはどんな反応をするのだろう。晶みたいに容赦なく今後も着用しなくなるのだろうか。でも、藤くんは晶とは違う。私をちゃんと大切に扱ってくれている。
「……つけなくても、いいよ」
少し悩んだが、ぽつりと言った。最低だ。藤くんを試している。