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サイレントエモーショナルサマー
第25章 viaggio Ⅰ
藤くんは流石の我慢できる男っぷりを発揮し、私がしかける誘惑と闘っているようだ。身体をずらし、藤くんのTシャツをたくし上げ、乳首を舐めると彼は私の腰を掴んで、辞めなさい、と色香を感じる声を出した。
「……そう言えば、前に1回したでしょ。ほら、玄関で」
「…!あ、あの時は頭に血が上ってて…」
まだ、夢を見ず自宅で眠ることが出来た時期。あれは確か6月の終わりごろだった。あの時、私は初めて藤くんの独占欲を垣間見た。
傷つけるよ、と言った私に彼は私が与えるものならば傷でもなんでも構わないと言った。
藤くんもあの時のことを覚えているらしい。頭に血が上って玄関で私に無理やり挿入し、背中に欲を吐き出した。あれはあれでかなり興奮したのだが、多分、藤くんはもう同じことを私にはしないだろう。
「じゃあ、逆上せてよ」
「ダメです。逆上せません。志保さんが今すぐここで婚姻届書いてくれるなら話は別ですけど」
「…それは致しかねる」
「じゃあ、ダメ。俺に志保さんに酷いことしたやつと同じことさせないでください」
やっぱり逆上せてはくれないようだ。ち、と舌を打って藤くんの耳の付け根に吸い付く。ぴくりと身体を震わせて息を乱してるくせに藤くんの脳内の各種経典のお力は見事である。
「……でも、眠れない」
「子守唄、うたいましょうか」
「結構です」
全くもう、と息をついて藤くんが勢いよく起き上がる。彼の好きな体位と同じ状況になった。私の腰を抱きながら首筋を舐める藤くんはもういつもどおり。尻を撫でる手もいやらしくて、優しい。
「たくさんイカせてあげますからそれで我慢してください」
「……ん?」
イカせてくれるのに我慢?意味が分からない。訝しむ私を手際よく全裸にさせると、藤くんは私を後ろから抱き締めながらヘッドボードに上半身を預けた。