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サイレントエモーショナルサマー
第26章 viaggio Ⅱ
「したいですか?」
「めちゃくちゃしたい」
「俺以外の人と?」
「藤くんがいい。でも、今、目の前に現れられたらやばい」
「じゃ、荒療治しましょうか」
「…最早それでもいいかもしんない」
「結構キてますね」

そうだよ、結構キてるんだよ。重症なんだよ。今までの私であればさっさと藤くんを放ってハンティングに出たことだろう。それをなんとか堪えている。自分で言うのもなんだが、これはかなりの進歩だ。

「我慢してください、明日には帰るんですから。あと、今日1日だけ。帰ったら志保さんがもういいって言うまでしましょ」
「どうする?私が藤くんの弾切れになってもねだったら」
「俺を誰だと思ってるんですか?志保さんが満足する前に切らしたことないでしょ」
「…ないね」

私を諭すような口ぶりだが、藤くんはきっと私がもういいと泣いても辞めはしないだろう。うなじにキスをして乳房を揉むのを辞めないあたり、藤くんも我慢の限界が近そうだ。余裕にさせてしまったと思ったが、1回出した程度では欲は治まりきっていないらしい。

「…今日、我慢したら明日ちゃんとしてくれる?」
「もちろん。そう、言ったでしょ」
「じゃあ、我慢するから触るのやめて」
「キスは?」
「そ、ソフトなやつでお願いします」
「承知しました」

ちゅ、と可愛らしく音を立てて頬へキス。檻を崩した藤くんは立ち上がってばさりと浴衣を脱ぎ捨てる。手際よく服を着替える藤くんを尻目に私もなんとか身支度を済ませた。うだうだしながら宿を出た頃には12時半を過ぎていた。

からりと晴れた穏やかな空。肌を焼く日差しはきついが、じめじめしていない分、なんだか心地よい。海岸沿いの小さな定食屋に入って海産物を楽しんだ。

「志保さん、あと10分で船来るみたいですよ。乗ります?」
「ん、乗ろっか」

定食屋を出てから辺りを散歩している所で湾内クルーズの案内所に差し掛かった。藤くんが話を聞けばクルーズ船は間もなく戻ってくるという。

冷房の効いた案内所内のベンチで少し船を待った。私たちの他には年配のご夫婦が1組と、小さな男の子二人兄弟の家族連れが1組だけだ。

その男の子たちの真似をして、購入したチケットの裏側になんとなく乗船記念のスタンプを押してみた。

船が来ましたよ、と案内がありベンチから立ち上がる。案内所から出たところで私は目を見開いて足を止めた。
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