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サイレントエモーショナルサマー
第26章 viaggio Ⅱ
「藤くん…」
「ああ、やっぱこいつが『藤くん』か。なんだ志保、お前こんな優男に惚れてんの?」
私が声を出そうとするとスカートの中へ入っていた藤くんの右手がさっと動いて私の口元を覆った。晶とは会話をさせたくないのだろうか。晶に対しては重たく威嚇するような低い声を出した藤くんは私の耳元では甘ったるい声で私を呼ぶ。
晶を挑発したいのか藤くんは私の首筋にがぶりと噛みついた。痛みが走るが、ぞくりともする。誰にもやらないよ、と言っているみたいだ。こんなことしていいのは自分だけだと主張しているようにも見える。
「その女はな、噛まれるより抓られるのが好きなんだよ」
「甘いね。この人は噛まれるのも好きなんです」
「……む!」
なんつー話してんだよ、と抗議の声を出そうにも虚しい呻きが藤くんの手のひらに吸い込まれる。なにを思ったのか晶は私に触れようとしていた手を引っ込めて再びポケットに押し込んだ。だが、立ち去る素振りは見せず、にやにや笑いのまま私たちを見下ろしている。
「意地悪しますね。ごめんなさい」
船のエンジン音で掻き消されそうな程小さな声で言って、藤くんは私の口元を覆っていた手を動かした。なに?と問おうとした口に無遠慮に二本の指が入ってくる。
「…んっ……」
舌を押さえつけられると声が上手く出せない。ぞくぞくし始める身体を叱咤しようにも腰に回っていた藤くんの左腕が動き、スカートの中へ入ってくるとそのぞくぞくは増すばかりだ。
「ふっ……う、」
「いいこ、大人しくしてください」
晶が見てる。しかも海の上だ。いやだ、ともがこうとしても熱い手のひらで直接大腿を撫でられると頭がどろりと溶けだすのを感じる。
「志保さん、濡れてますよ。昔の男に見られて興奮してるんですか」
クロッチ部分を撫でながら耳元で小さく言う。その藤くんの声が晶に聞こえてるかどうかは分からなかった。首を振ろうとすると口の中の藤くんの指が上顎をつつく。ダメだ、これも気持ち良い。
「……んんッ」
ショーツの脇から藤くんの指が挿し込まれ、どろりと濡れた膣口を撫でた。跳ねる私の身体に気をよくしたのか耳元で笑い声。
普段は焦らすのが好きな指が性急に中へと入ってくる。漏れそうな声は押さえつけられた舌の所為で出ては行かなかった。なにこれ。どうしよう。晶が見てるのに。