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サイレントエモーショナルサマー
第27章 dipendere
「……何時に帰って来たっけ?」
「19時…いや、ちょっと過ぎてたかな…」
お互いシャワーを浴びてからだったので実際にもつれ合ったのは21時少し前くらいからだろう。相変わらず藤くんのセックスはバカみたいに長くて、最高に気持ち良い。
「藤くんってやっぱり人間じゃないよね」
「言ったでしょ、俺、獣なんで」
「……恐れ入った」
「満足してくれました?」
「した。もう勃ったモノ見てもなにも感じないかもしれない」
再び彼の胸にすり寄って目を伏せる。このままもう一度眠ってしまいたい。だが、珍しいことに空腹がそれを阻む。普段は優先順位の低い欲求も夕飯抜きの長時間セックスで我慢の限界に達しているらしい。
「お腹鳴りましたね。なんか買ってきますよ」
「……私も行く」
「でも、足しんどくないですか?」
「しんどいけど…でも、」
ひとりになりたくなかった。変な夢を見た所為だろうか。私も行く、と年甲斐もなく駄々を捏ねれば藤くんは髪を撫でて、わかりました、と言ってくれる。
「……やばい、足、ぷるぷるしてる」
「ほら。やっぱり俺行ってきますよ」
「………」
「そんな捨て猫みたいな目で俺を見ないでください。はいはい、行きましょ」
どんな目だ。首を傾げる私に、しれっとボクサーを渡して藤くんはTシャツとデニムへ着替えていく。足が長くて羨ましい。穿き慣れつつあるボクサーに足を通して、藤くんチョイスの服を着る。
外へ出てみると眩しさが目を焼いた。日中でなくとも、旅先の街に比べ、都会の暑さはやはりじっとりと肌にまとわりつく。よたよたと歩きながらうなじを滑っていく汗を感じた。
いつだか大量のパンを買ったパン屋はまだ空いていないからとコンビニで食べ物を買った。旅先で意味もなく買って持ち帰ったお菓子を思い出して、今日のおやつだな、なんて考えながら手を繋ぎ、アパートへ向け、歩き出す。
どこかで、いや、そこら中で蝉の鳴き声がする。そう言えば旅先では感じなかった。
あと3日。今日を入れてあと、3日で夏季休暇が終わる。また出勤するようになった時、私は浩志とどんな風に接するのだろう。隣のデスクに居ながら言葉も交わさないのだろうか。
その前に、日曜には墓参りに行かなくては。毎年、だらだらと汗を流しながら祖父の温情で遺骨をいれてもらえた墓の前、私は憑りつかれたように何時間も動くことが出来なくなる。