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サイレントエモーショナルサマー
第28章 malinconia

◇◆

漸く分かったことだが、好いている人間が居たとして、その人に自分以外の異性の影を感じれば男女問わず多少なりとも気持ちがざわつくだろう。今の場合、影どころか実体がすぐ傍にある訳で浩志の眉間の皺はどんどん深くなっていく。そろそろ取れなくなるんじゃないかと心配だ。

「…最近お前どうしてんのかと思ってたけど藤のところに居たのか」
「そ、そうです…かれこれ20日ほど…」

昼休憩の間に話をする余裕はなく、藤くんは抵抗したが業務後に食事を取りながら話をすることになった。店は以前よく来ていたサングリアの美味しいイタリアン。全ての元凶となった場所である。

4名がけのテーブル。配置は私が一人で座り、向かいに浩志と藤くんが窮屈そうに隣り合っているという変な構図だ。

浩志は怒っているのか呆れているのかよく分からない表情で煙草の煙を吐き出す。ゆらり、立ち込める煙の香りがなんだか懐かしい。

「で、やることやって、夏休みも同時にとって、お前たちはずっと一緒に居たわけか」
「…さ、左様でございます」
「旅行も行きましたよ。ね、志保さん」
「旅行…?あの土産か…お前ほんとなに考えてんだよ」
「だ、だってさ、私が旅行とかレアじゃない?浩志には散々ご馳走して貰ってたし、お土産買いたかったんだもん」

一応、一瞬は悩んだぞ。でも、普段近場の外出ですら渋る私が浩志に土産を買う機会なんてこの先訪れそうもないし、滅多にない機会を逃したくなかったのだ。

ぷう、とふてくされると、お前がふてくされてんじゃねーよ、と容赦ないお言葉。そう、これである。浩志のこのぞんざいな扱いが結構心地良いのだ。物言いは晶とよく似ているが、相手が浩志だと私のことをよく理解した上で言ってくれているような感じがして気が落ち着く。

浩志は完全に気持ちの整理が云々などと言っている場合ではなくなったようだ。くそ、と短く言って煙草を灰皿に押し付けるとビールを煽って口を開く。

「お前、今日も藤の家に帰るのか」
「当たり前ですよ。ね、志保さん。早く帰りましょ」
「つーか、藤、お前が無理やり連れ込んでんじゃねえだろうな」
「それは違うよ。藤くんは私が家で眠れないの知って置いてくれてるだけで…」

そうだそうだと言いたげに藤くんは頬を膨らます。この表情は結構可愛い。浩志は言葉を探すように溜息を吐いてぐしゃぐしゃと自分の髪をかき混ぜた。
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