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サイレントエモーショナルサマー
第28章 malinconia

話がまとまって浩志と藤くんが密かにモメ出す気配を察し、お手洗いついでにしれっと会計を済ませると、男に恥をかかせるなと怒られた。

浩志はチカの監視を信じることにしたようで、彼とは駅で別れた。私の荷物はどうするかという話になり、一先ず3人で藤くんのアパートへ向かう。

藤くんはちょっと不満顔だったが、チカに昔の私はどうだったかとあれこれ聞いていく内に優しい顔になっていった。

「志保。浩志にはちょっと申し訳ないって思うけど、1時間半あげる。そこの喫茶店で待ってるから」

藤くんの自宅アパートの最寄駅につくとチカは言った。時刻は22時17分。私が荷物をまとめるのに1時間半もかからないタイプだということを彼女はよく分かっている。発言の意を察し、思わず顔を赤らめると、早く行け、とチカも顔を赤らめる。

「……中原さんには内緒ですよ」
「苦しくなったら言っちゃいそう」
「そしたら俺が殴られますから。大丈夫」
「……ほんと、色々ごめんね」

手を繋いでアパートへ向かう足は、幾らか急いていた。外階段を駆け上がるようにしてあがり、藤くんが玄関の鍵を開ける。今朝、家を出る時はまた当たり前のようにこのあたたかい部屋に戻ってくるのだと思っていたのだが、そんな日は当分来なくなるのかと思うと少し、寂しい。

先に荷物をまとめた。こまめに整理していたので15分とかそこらで終わったと思う。大きいボストンバックのチャックをしめて、よし、と息をつくと後ろから抱き締められる。

「……行かせたくないです」

か細い声で言いながら藤くんは私の首筋に甘く噛みつく。ごめんね、と前に回った彼の腕に触れ目を伏せた。

「ちゃんと考える。藤くんに甘えてばっかりだったけど、藤くんが言ったように悩んで答えだすよ。ありがとう。今日まで置いてくれて。でもね、思ったの、1回離れたらもっとちゃんと考えられるんじゃないかって。待たせてごめん。もうちょっと待たせると思うけど、」
「…今までと『待つ』意味が少し違いますね。今までのは途方もなかったけど、今度のはゴールが近い気がします」

腕の力がゆるんだ。そっと身体を反転させられ、藤くんの方を向く。顔に、行かないで、と書いてある。頬に手を伸ばして彼の唇をねだった。
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