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サイレントエモーショナルサマー
第4章 日曜日は苦みを少し

短くなった煙草を灰皿に押し付け、次の1本を取り出すとインターフォンが鳴った。室内の応答ボタンの上の液晶には来訪者の顔が映し出されているが流石にソファーの位置からは視認できない。

誰だろう。宅配便だろうか。立ち上がるのが億劫だ。ごめん、と呟いて居留守を決め込むと、居るのは分かっている!とでも言うようにリズミカルな音が鳴る。

「…チカか」

痛む下半身に鞭を打ち、呼び出しボタンは押さずに真っ直ぐ玄関へ向かった。鍵を開けるとこちらから扉を開く前にそれが勢い良く引かれる。

「やっぱり居た」
「…いらっしゃい」

なにやら大荷物の来訪者は出番が少ないが故にシューズボックスに追いやられたスリッパを手慣れた様子でひっぱり出してずかずかと部屋に上がり込んでくる。足の痛みで動きの鈍い私をちらりと見やって溜息をひとつ。

「まーた、どっかの男引っかけてきたの?あ、あれか隼人くんだっけ?そんなに激しいの?」

チカが大げさに肩を竦めて見せると毛先が緩くカールした彼女御自慢の黒髪がさらりと揺れる。手にしていた荷物をダイニングテーブルの上に置いて我が物顔でソファーに座り一息。迷いなくテレビを点ける姿を尻目に紅茶でも淹れてやろうとキッチンへ向かった。

「隼人は今、研修だか遠征だかで居ないんだよね。暫く会ってない」
「ほー。じゃあ、欲求不満でハンティングしちゃったわけね。え、もしかしてあの今の会社で仲良いって言ってた人とヤっちゃったとか?」
「ハンティングってあんた…ていうか、浩志とはそういうの本当にないから。どうして仲疑うかね」

注ぎ口が細い電気ケトルは昨年の誕生日にコーヒー派の私の為にチカが贈ってくれたものだった。ケトルをセットしてから彼女が好きな茶葉を探して戸棚をあれこれ開け閉めしているとチカが動いた気配がする。

「嫌なんだ」
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