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サイレントエモーショナルサマー
第4章 日曜日は苦みを少し

「なにが?紅茶?でも、コーヒー飲まないでしょ」
「ごめん、言葉が足りなかった。志保、あんた、その浩志との仲疑われるの嫌なのね」
「嫌とは言ってないよ。たださ、男女間の友情を否定して欲しくないの」
「誰かに否定された?あんたのその腰がっくがくにした男かな?」
「流石、チカ様。あ、茶葉あった。ここに入れてたか」
するりとキッチンに滑り込んできたチカは取り出した紅茶の缶を見て、中身大丈夫?と眉を顰めた。香りするし大丈夫でしょ、と返して棚のインテリアと化していたティーポットに放り込もうとするとその手を制される。
「貸して。紅茶はね、ちゃんと淹れないと茶葉の持ってる美味しさが半減するの」
「コーヒーはいいよ、適当に淹れても美味しいし、ちゃんと淹れたらもっと美味しい」
このやり取りは過去に何度かしていた。客人にいいから座ってろとどやされ、すごすごとソファーへ舞い戻る。拘り抜いて購入しただけあってやっぱりこのソファーは痛む足腰に優しい。
「ヤケ酒付き合って貰おうと思ってたけど先に志保ちゃんのお話聞こうかな」
「ヤケ酒?真昼間なんだけど…しかも私ほんの小一時間前に帰ってきたとこなんだけど」
「げっ朝帰りどころか昼帰り?あんたってホントふしだら!」
「なにを今更」
紅茶を淹れて私の隣に座ったチカがにやにやと笑って詰め寄ってくる。彼女が使っているどこかのテーマパークの土産物のマグカップは数年前に彼女自身が自分への土産だと言って買ってきて我が家に置いていったものだ。
私にもペアのカップを買ってきてくれたのだが、片割れは先月チカが落っことして割った。

