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サイレントエモーショナルサマー
第5章 カウント・ゼロ
「…もしかして今日もシたいんですか」
「へ?いや、えっと、確かに私はするの大好きだけど藤くんと毎日やってたら流石に身体持たないって」
隼人のだったら毎日じゃなきゃ足りないけれど、藤くんの回数とモノなら一週間に一晩で十分だ。いや、欲を言うと二晩でもいいかもしれない。というか朝からなんてことを言わせるのだ。
「ああ、良かった。今日帰り遅くなるんで志保さんがムラムラしちゃったらどうしようかと思ってたんですよね」
「……いらぬ心配をどうもありがとう」
ちょっとずれた気遣いをしてくれた藤くんは胸を撫で下ろしてにこりとする。会社では今まで通りにしてくれと言ったのにこれが最後だともう一度キスをしてきて、唖然とするわたしを置いてスキップに似た足取りで給湯室を出ていった。運動神経良さそうなのに下手だなあ、それじゃステップだ。
「………大丈夫か、私」
手玉に取っているつもりで、取られているのではないだろうか。今になって思えば、昨日の朝、私を送りに出た藤くんの顔はなにか策を練っているような顔に見えなくもなかった。まだ、底が知れない。私のことをどう知っているのかは詳しく語ろうともしていない。
いずれ知る機会が訪れることだろう。それを期待して頭を仕事モードに切り替えるべく両手で両頬をぱんと叩き、私も給湯室を後にした。