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サイレントエモーショナルサマー
第5章 カウント・ゼロ
◇◆
「お疲れさまでした。お先に失礼します」
定時を少し過ぎた頃に藤くんはアイドルスマイルを振り撒いてフロアから出ていった。その姿が消えるとか帰り支度を進めていた浩志が手を止めた。
「…なんか、お前藤と打ち解けてねえか」
「そうかな?」
「藤と昼飯の約束なんか今までしなかったろ」
「あー…、まあ、この前ちょっと話してみたら案外いい子だなって思って」
股間がね、とは言わない。言い出したのは浩志の方なのに興味があるんだかないんだか、へえ、とだけ言うと鞄を片手に立ち上がる。
「帰るけど。お前は?飯でも行くか」
「ううん、今日はちょっと早く寝たいから。もう少し作業したら帰るよ」
「そうか。じゃあな」
「うん、おつかれ」
ひらひらと手を振って浩志を送り出す。2泊3日耐久レースからのチカのワイン責めで20代後半の身体は食欲や性欲の前に早く眠れと私に訴えていた。
ワープが出来たらいいのに。あ、それか、某ネコ型ロボットのピンク色のドアが欲しい。一瞬で帰宅、ベッドに倒れ込んで泥のように眠りたい。悶々としながら作業を終え、帰路に着いた。