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サイレントエモーショナルサマー
第2章 6月某日金曜日
「藤くんのは不思議と平気なんだよね。多分、彼、本気じゃないんだよ」
フラグを折って折って折りまくり、気付けば28歳。まともな恋愛から逃げ続けここまで来たらひとりで死んでいくことを想定し、生きている。
だが、私にだって淡い恋心を抱いたことが全くなかったかと言えばそう言うわけではない。その未熟な過去の恋については未だ浩志には語っていなかった。
「本気じゃない、ね」
「なにその声。藤くんのあれが本気に見えるの?」
「あいつが本気がどうかをお前が判断するのは違うだろって言いたいだけ」
不満そうな声にPCに向けていた視線を浩志にやる。彼はこちらを向かず淡々と仕事を進めながらふうと息を吐いた。
確かに浩志の言う通りなのかもしれない。だが、藤くんが本気がどうかなんてのはさして重要なことではない。どっちにしろ私は彼に、あなたと付き合うつもりはないと何度も告げている。
「なあ、都筑」
「うん?」
「お前さ、」
小さな溜息。横顔に陰りが出る。浩志の言葉を待って視線を逃がすが、彼はやっぱりいい、と口を噤んでしまった。