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サイレントエモーショナルサマー
第7章 erosione
身じろいで藤くんの腕の中から抜け出そうとすると彼はそれを阻んで強引に私に口づける。
閉じようとした歯列を割って口内をかき回す舌の感触はやはり気持ちが良い。流されそうになるのを感じて藤くんの胸を叩くと唇が離れていく。
「傷ついたっていいです。あなたがくれるものなら傷だってなんだって構わない」
「なんでそこまで、」
「志保さんは俺を救ってくれた。だから今度は俺があなたを孤独から救います」
「なにそれ」
「今はまだ、言いません」
彼を救ったことなんてあっただろうか。年末に彼がひとりで残業をしている時におにぎりを差し入れしたことか。いやいやそんな些細なことではないだろう。
「志保さんが俺とするのもう嫌だって言うなら受け入れます。でもそうじゃないなら納得しません」
嫌なんかじゃない。藤くんとのセックスはいとも簡単に私から思考回路を奪いとって、私をどろどろに溶かしてくれる。
「嫌ですか」
申し訳なさそうなしょげた顔はどこへやった。藤くんの色素の薄い瞳はぎらりと怪しい気配を漂わせて私を捉える。恐々触れていた手は、いやらしく、私を誘うように身体を這う。
嫌じゃない、と答えるかわりにキスをすると悪魔の顔で笑って私を抱きあげた。