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イケないキミに白い林檎を
第5章 狂乱

「送っていくよ」

「ここからならひとりで帰れますから必要ないです。まったく過保護なんですから」

「分かった。気をつけて帰ってね」


「あの……。なんでいつも私に手を出さないんですか?……そんなに女としての魅力がないですか」


「いや、綺麗だよ」


「なっ……!?」


「でも乙羽さんは俺にとって大切な……後輩だから」

壊してきそうで、壊されない上下関係。

この人じゃなかったら、とっくに一線を越えていた気がする。


「本当に男なんですか……。先輩面するのもいいですけど、女なのかって疑いますよ」


「それじゃあ、本当に男なのか確かめてみる?」

「っ……。結構ですっ!もう帰ります」


「うん。何かあったらいつでも言って」


マンションを出て振り向くと、今度は後ろから付いてこない。

昨日から長い時間一緒にいてくれたから、少し寂しいような気もする。


一人になって昨日あったことが頭にぼんやりと浮かんできた。

いっぱい泣いたのにまだ目が熱くなる。


話し合いもできなかったあんな恋の終わり方では忘れられないよ……。

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