この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
イケないキミに白い林檎を
第5章 狂乱
「本当にすみませんでした。でもそっちだって、あんなこと言うから」
「うっ……」
確かにいけないことを言ってしまった気がする。
抱かれたと勘違いしてしまった私も悪い。
「あの時、彼女に振られたショックで飲みまくって酔ってまして……」
「……そうだったんですか」
この人も一緒なんだ……。
私はまだ飲めないからお酒の力には頼れなかったけど、傷ついて何もかもどうでも良くなった。
振られた話を聞いて、スーツの男に同情してしまう。
「本当に申し訳ありません。でも僕が悪いことをしたのは変わりないので諦めます。……行きましょう」
「いいえ、もういいです。私も勘違いして変なこと言ったのが悪いんですし、すみません」
「謝らないでいいですよ。……台風、早く行って欲しいですよね」
「そうですね……」
スーツの男と一緒にまだ止まない雨を見ていた。
真面目そうな性格、見た目はそこそこ。
簡単に言うと、どこにでもいそうな平凡な男。
夏に失恋した者同士ということで妙な親近感が湧く。