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イケないキミに白い林檎を
第5章 狂乱

「本当にすみませんでした。でもそっちだって、あんなこと言うから」


「うっ……」


確かにいけないことを言ってしまった気がする。

抱かれたと勘違いしてしまった私も悪い。


「あの時、彼女に振られたショックで飲みまくって酔ってまして……」

「……そうだったんですか」


この人も一緒なんだ……。

私はまだ飲めないからお酒の力には頼れなかったけど、傷ついて何もかもどうでも良くなった。


振られた話を聞いて、スーツの男に同情してしまう。


「本当に申し訳ありません。でも僕が悪いことをしたのは変わりないので諦めます。……行きましょう」


「いいえ、もういいです。私も勘違いして変なこと言ったのが悪いんですし、すみません」


「謝らないでいいですよ。……台風、早く行って欲しいですよね」


「そうですね……」


スーツの男と一緒にまだ止まない雨を見ていた。

真面目そうな性格、見た目はそこそこ。

簡単に言うと、どこにでもいそうな平凡な男。


夏に失恋した者同士ということで妙な親近感が湧く。

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