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イケないキミに白い林檎を
第9章 元彼
いや、本当はソラ先輩だけど。
「どうしてソラ先輩のことばかり気にするの?」
「あいつにだけは絶対負けたくねえから……」
横になりながら、長話なんて滅多にしない颯太が口を開いて教えてくれた。
兄弟が妹しかいない颯太は、従兄弟のソラ先輩とよく遊んでいた。
しかしその傍ら、親族からずっと比べられて見られてきたのが苦痛だったらしく。
ソラ先輩は頭が良くて、運動もそこそこできて、礼儀もある。
一方、颯太が勝っているのは一つ違う年齢だけ。
追い越していられるように走るけど、結局追い抜かれる。
何も誇れることもないのに無垢に慕ってくるソラ先輩がどこか憎めなくて、弟のように可愛いがっていた。
社会人になって比べられることは減ったけど、大きな劣等感に悩ませながらも今もいい兄貴面をしているということ。
大まかに教えてくれたことから颯太の弱気な一面を初めて知り、複雑な気持ちになった。
「大丈夫。颯太にしかない良いところだってあるよ」