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イケないキミに白い林檎を
第10章 告白
「あの猫のぬいぐるみも買って行くから……、ああ。パパも楽しみにしてる……それじゃ」
最後に聞こえてきた言葉でハッとして、電話を切った樹さんに視線を向けた。
「失礼しました。……聞こえてました?」
「少し……」
「実は、僕には娘がいまして。妻と色々あってから離れて暮らしているんです」
「え……」
「こんなことを言って驚かせてすみません。だけど、風子ちゃんのことが本気で好きだったのに残念です」
気恥ずかしそうに語る樹さんを前になんとか顔色を保つけれど、心の底で大きな後ろめたさを感じていた。
「……ごめんなさい」
本当に、ごめんなさい……。
「いえいえ、謝らないでください。風子ちゃんにとっては散々な出会いでしたよね」
「もうそう言う事をしちゃダメですからね。これからは良いパパでいて下さい。……さようなら」
説教をするように言うと樹さんは困った顔で笑っていた。
そんな彼にわざと微笑みかけてから、背を向けてひとりで前に歩き出す。
別れを告げて後悔はなく、悪夢から覚めたような気分だった。
だから、樹さんとの関係はこれで終わりにして良かったと思う。
秋の夜空、星がいつもよりたくさん見えて綺麗だけど吹いていた風は厳しくて冷たかった。