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イケないキミに白い林檎を
第11章 片想い

「はい、俺の家の合鍵。カバーは白かピンクだったら、ピンクを選ぶよね」

ピンク色のうさぎのキーカバーが付いた鍵と、余ったキーカバーを手のひらにポンッとのせられる。


「確かにピンクを選ぶのは間違ってないですけど、なんで私に鍵を渡すんですか?」


「乙羽さんは俺の彼女でしょ。これからいつでも来ていいし、勝手に部屋に入って待ってていいから」


「えっ……。迷惑じゃないんですか?ソラ先輩がいない間に悪事を企ててるかもしれないですよ」

「ははっ、そんなことしないでしょ。信用してるから心配してないよ」


まあ、しないのは当然だけど。

他人なのに、自分の家の鍵をよく渡せるな……。


とりあえず、もらった鍵をスカートのポケットにしまった。

一つ余ったキーカバーを目にしながら、なんとも言えない気持ちが押し寄せる。


「じゃあ、ソラ先輩は白いうさぎの方を鍵に付けてくださいね。一つだけ使わないでおくのも勿体ないので」

手のひらを見せて鍵を要求すると、きょとんとした顔で差し出してくれた。

白いうさぎのカバーを付けてから鍵を返す。


「ありがとう。ただの鍵が可愛くなったな」

男性が進んで選ぶことがなさそうなデザインだから物珍しそうに見るソラ先輩。

よく考えたら、これは色違いのお揃いだ。


「なんか私たち、カップルになったみたいですね」

「ん、なんだって?さっき彼女って言ったばかりだよね」


透かさず入るツッコミにハッとした。

私の余計な一言が出てしまったせいで、笑っているのに黒いモヤを放つ大魔王がうっすらと影を現す。


「もっ…、もうカップルでしたね。まだ慣れていなくて、あはは……」


“一応”カップルだった……。

両想いになってから付き合ったわけじゃないから自覚がない。


三か月後には潔く別れて、他人同士になってる可哀想なカップルだけど……。

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