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イケないキミに白い林檎を
第12章 甘い口付
「うん。それでも離さないから覚悟しておいて」
「本っ当、強引ですね…」
どこまでも私を縛り付けようとする。
「嫌?」
でも……
「ううん。嫌じゃないです…。本当は、私もソラ先輩との約束を守りたいです……」
三ヵ月の間にもっと恩を返したい。
約束を果たしたい。
「ありがとう、乙羽さん。好きだよ……」
「うっ……、ソラせんぱいっ……」
気持ちがいっぱいになって布団から出てソラ先輩の胸に飛び込むと、包むように抱き締めてくれた。
「うああん……。ごめんなさっ……、ごめんなさい」
どんなに泣いても、受け入れてくれる。
前もここで泣いたけど不思議と安心感があって、不安だらけだった他の居場所とは違った。
身を委ねたくなる程に温かくて心地良い。
我儘で馬鹿な私を甘えさせてくれる都合のいい男。
でも、もうそれだけじゃない。
「もし妊娠してなかったら、二番目でいいから俺を好きになって」
「……はい」
顔を見合わせて微笑んだ後、改めてギュッと抱き合った。
「明日、生理予定日から七日目なので調べてみます。でも結果が怖いです…」
「大丈夫だよ。……きっと大丈夫だから」
そう言って赤ちゃんをあやすように、私の背中をぽんぽんっと一定のリズムで優しく叩いてくれた。
重かった心がすうっと軽くなって、落ち着きを取り戻していく。
この晩、颯太に電話を掛けることはなかった。