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イケないキミに白い林檎を
第16章 わたしのこいびと
「嘘。前に私の買い物に付き合ってくれたじゃん」
「ただついて行っただけだろ。でもそれがおまえのしたいデートなのか?」
「……うん。ダメかな?」
ちょっと我儘を言い過ぎた……?
腕を組んでから不愛想な顔で見てくる颯太に威圧を感じて物怖じした。
「そこまで言うんだったら今日は特別におまえに従ってやってもいい。
いつも飯作ってくれてることだし、たまには言う事聞いてやらねえとな」
「本当に!?ありがとう颯太」
口論が終わると淀んでいた空気が消えて始まる前よりも澄んでいく。
同時に離れていた距離が縮まった気がした。
その後、駅前にあるショッピングモールに行って服や雑貨など売っているお店を何軒か見た。
あまり関心がないのか一緒に見て楽しむというよりも、また私の買い物に付き合ってもらっているような感じ。
けれども時間が経つにつれて普段笑わない颯太も表情が緩んでいった。
一通りお店を巡り、休憩がてら空いていたベンチに座る。
腰を下ろす前に傍を離れた颯太が戻って来て、私の手のひらに温かい缶を置いた。
「ほら。喉乾いただろ」
「ありがとう。気が利かなくてごめんね」
貰った飲み物を見てみるとカフェオレだった。
私は苦いのは飲めなくて、颯太はブラックコーヒー好きだからこれを選んだのかな。
「他のが好きなのか?」