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イケないキミに白い林檎を
第20章 ふたりの嫉妬と秘密の関係
電車とバスを乗り継いでやってきた場所は真冬の海。
生憎、天気は曇りだった。太陽の光が顔を出すことはなく灰色の雲が覆っている。
そのせいなのか私と颯太以外に海を見ている人は誰もいなかった。
「こんな荒波が立っている海を見せておまえは何をしたかったんだ」
「海と空を見ていると心が広くならない?普段自分がいる場所がいかに狭いか思い知ると言うか……」
テトラポットに強い波がザザーンっと音を立てて当たり飛沫が上がる。
「ならねえよ。身の危険しか感じねえ」
ソラ先輩と一緒に見た時の海との違いが天と地の差ほどある。
開放感に浸って欲しいなと思って連れてきたのに颯太は機嫌が悪くなる一方。
どうすれば元気になってくれるのか思い浮かばなくて、砂浜のそばにある堤防に座って海を眺めた。
「オイ、こんな危ないところに座るな」