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イケないキミに白い林檎を
第22章 Reminiscence
「だって…、だって…っ…こんなところにっ……」
「ここは本当は来たくないところなんだけど、一度足を止めると動けなくなるような感覚になる場所なんだ」
どこにでもあるような川と橋。目立つ建物も何もなければ、変わった物も設置されていない。
景色も綺麗とは言えず、誰しも素通りするような場所。
ここが特別だと言ったソラ先輩は、また橋の向こうのどこか遠い所を何も言わずに見つめる。
沈黙を破ってくれたのは、私の動悸が治まった頃だった。
「ねえ、乙羽さん。……どんなことでも受け止めてくれるんだよね?」
「はい。なんでも受け入れる覚悟はあります」
目元をごしごしと拭いて、ソラ先輩の方を向くと見たこともないほど憂に満ちた顔をしていた。
そして重たそうに口を開く。
「じゃあ……五年前にこの場所で、俺のせいである人が亡くなったって言ったら受け止めてくれる?」
「え……」
なに、それ……
どういうこと……?
何を言ってるの……
あまりにも信じ難い出来事に私は言葉を失った。
治まったはずの動悸がまた激しくなる。
ドクン、ドクン、ドクンと煩い上に、体も小さく震えてきた。
私に触れようとするソラ先輩のことが急に怖くなって一歩だけ後退りしてしまう。