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イケないキミに白い林檎を
第22章 Reminiscence
「燈也は待ち合わせ時間にぴったりに来る人だったから、俺が遅れずに会いに行っていれば今も生きていたのかもしれないね。
そう思うと、……俺が殺したと言っても同然で。今は大分気持ちが落ち着いたけど、時々考えてしまってね」
目元を見せないようにソラ先輩は月を見上げた。
涙を流しているかは分からない。
けれど、胸の内の大きな苦しみを感じた。
それを少しでも軽くしてあげたくて。
力の入っていない手を私は優しく撫でてから握った。
「違います。ソラ先輩は殺してないですし、悪くないです。……だから自分を責めないで下さい」
「本当にそれでいいのかな……」
「もし私がいなくなった立場の人間だったら、大好きな人には自分を責めながら生きて欲しくないです。……たくさん笑って、幸せに生きて欲しいです」
私は言葉巧みな人間じゃないから器用なことは言えない。でも、言葉で伝えなくても隣にいて包んであげることはできる。
ソラ先輩の前に立って、もう片方の手も握った。