この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
イケないキミに白い林檎を
第22章 Reminiscence
やっぱりこの手は温かい。
罪を背負うには似合わない温かさだ。
「そうか。キミはそう思うんだ」
「はい。悲しい顔より笑顔でいてもらった方が相手にとっても幸せだと思いますから」
やんわりと微笑んでそう答えると、何かを思うように目を閉じてからソラ先輩も微笑み返してくれた。
「……なるほど。聞いてくれてありがとう。乙羽さんに話してみて前よりずっと心が軽くなった気がするよ」
その笑顔は今までよりも少しだけ明るく見えて、冷たさなんて微塵も感じなかった。
以前言っていた償いの意味がやっと分かった。
燈也さんの死をきっかけにいじめという存在を憎んでいたから颯太のことも助けようとしたんだろう。
心の中はどう思っていたとしても……。
片方の手を握り返された後、私とソラ先輩は歩き出した。
月の光ですぐ横に薄らとできた影。
それが繋がって見えて愛おしく思える。
真っ直ぐと進み、帰り道を歩いて行く。
橋を渡りきった所に立て掛けてあった綺麗な花束が優しい風で微かに揺れた。