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イケないキミに白い林檎を
第26章 運命の赤い糸

「ただいま……って乙羽さん何してるの!?」

リビングのドアが開いてソラ先輩が入ってくると驚いた声を上げる。

「こうすれば記憶が戻るかなって思いまして」


この前みたいに強い衝撃があればいいと思い、テーブルに頭をゴンッと打ち付けた。

自分でも馬鹿だと思う。

でもこれ以外の方法で衝撃を得るには痛そうなことばかりだった。


「やめなよ。人間の体はデリケートで単純ではないんだよ」

「そう思うんでしたら過去の私のこと教えてください」

「教えないって何度言えば分かるんだよ」

「ううっ……。だって……」


「おっ、いい匂いがする。夜ご飯作ってくれていたんだ。ありがとう」

台所から漂ってくるビーフシチューに気付かれて話が逸らされる。

喜んでくれるソラ先輩に気を取られて、この日も記憶に関して何も知ることはできなかった。

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