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イケないキミに白い林檎を
第26章 運命の赤い糸
「いや、付き合ってはいなかったよ。両思いにはなれたけど、付き合う前に乙羽さんが記憶を失ったからね」
「なんですぐに付き合わなかったんですか?」
「俺はすぐにでも付き合いたかったけど、乙羽さんなりに心の準備がしたかったんじゃないかな。だから、……ずっと待ってた」
泣き虫。涙がじわじわと溢れてきて拭かないといけなくなる。
楽しくお散歩デートしようって約束したのに泣いてしまいソラ先輩をまた困らせる私。
思い出せないのが悔しくて、記憶を失った自分が許せない。
私が忘れさえしなければ寄り道することはなくソラ先輩と無事に結ばれていたのに。
裏切り、他の男で体を汚して、長い間待たせることになってしまった……。
「っ…、ううっ……。ごめんなさい……」
「もう過ぎたことだから。それ以上泣かないでよ」
「すみませんっ……。でもこの前、高校に遊びに行って窓ガラスが割れた時に思い出した謝りたかったことがやっと分かりました。
私は事故にあった瞬間、ソラ先輩に大切なことを伝えに行けなくなってしまったから謝りたかったんです」