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イケないキミに白い林檎を
第26章 運命の赤い糸
「キミが俺のことを思い出すとあの頃を思い出して傷付くと思ったから」
「私が傷付く……?」
「記憶をなくす前の乙羽さんと俺が一緒にいた頃は、乙羽さんがたくさん泣いて傷付いていた時だったんだ。だから過去のことは話さずに隠してきた」
「お母さんから過去のことを聞きました。私が学校でいじめられていたからですよね」
「うん……。俺と過ごした思い出を忘れていてもいいから、乙羽さんには幸せに暮らして欲しかったんだ。
傷付いて泣いている姿より、笑っている姿を見ていた方が俺も幸せだから」
確かに記憶を失ってからは幸せな環境に恵まれていた。
何も知らなかったからこそ不安になることもなくて、悲しかったことを思い出して泣くこともなかった。
思い返すと深く傷付くような思い出は颯太に浮気されたことくらい。
「っ……、おかしいです。苦しいに決まってます……。私だったらそんなことができません」