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イケないキミに白い林檎を
第26章 運命の赤い糸
「あのっ、すみません。過去のメールを見たら記憶をなくす前の私はソラ先輩のことをそう呼んでいて、敬語も使っていなかったみたいだったのでつい。……って気を悪くしちゃいましたか?」
「いや、ごめん……。少しの間、こっちを見ないでくれるかな」
背中を向ける前に目が潤んでいたように見えた。
きっと過去の私と今の私からのメッセージを受け取ってくれたからだろう。
私は後ろからソラ先輩をゆっくりと抱き締めた。
こうして優しい時間が流れるのは、優しい嘘のおかげ……。
爽やかな秋風が髪を撫で、綺麗な夕焼けに照らされて長い影ができる。
離れてしまった私たちの距離をまた近付けてくれた夕暮れ。
これから先、どんなにつらいことが待っていても今日知ったことは二度と忘れたくないと心の底から思った。