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イケないキミに白い林檎を
第29章 in flore
何から話せばいいのか考えながらソラ先輩の方を見ると小さく咳き込んでいた。
風邪を引いているからマスクをつけているのだろうか。
心配しながら視線を送ると私から少し離れてベッドの上に座った。
「買い物のついでにいつもの待ち合わせ時間に駅に行ってみたら乙羽さんを見掛けたんだ。話したいことがあるって言ってたから気になってね」
「会いたくないって言ってたじゃないですか……」
「風邪を引いてしまってさ。このまま会ったら乙羽さんにうつしてしまうと思ったから」
「そうだったんですか……。気持ちの整理ができたってことは、ソラ先輩の気持ちは決まっているんですよね」
カップの中のミルクティーをぼんやりと見つめて二人の時間を進める。
「うん……、決まってるよ。あれからひとりになって、乙羽とこれからどうするかを考えていたから」
迷いのない穏やかな口調を聞いて、私は涙を浮かべながらカップを握った。