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イケないキミに白い林檎を
第29章 in flore
「なるほど。だから俺はダメだったのか。本音を言うと、あいつを好きじゃないって言った乙羽さんを信じてあげることができなかった」
少しでも秋に揺らいでしまった自分がいたからそれを責めることはできず口を閉ざす私。
カチカチと時計の針が進む音が虚しく部屋に響く中、ソラ先輩は時折咳き込んでいた。
静まり返りながらもゆっくりと話を進めていく。
「こうやって傷付け合ってしまうんだから離れた方が楽だと思う」
「それは、……私も思いました」
「乙羽さんも考えていたのか。二人でそう思うんだから、きっとこれが今の俺たちには一番いい選択肢なんだろうね」
こうなると予想できていたことを口にされて我慢できなくなり大粒の涙が零れ落ちた。
両手で握っているカップの熱はもう冷めていた。
体を震わせて泣いているとソラ先輩が少しだけ距離を縮めてくる。