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イケないキミに白い林檎を
第29章 in flore
カップを置いてから意を決してソラ先輩の胸に飛び込んだ。
本当はすごく怖い――――
記憶を失う前に受けた心の傷が抉られているように体が震えて息苦しくなってくる。
触れたくてもずっと近付くことができなかった大好きな温もり。
やっと飛び込むことができて堪能したいところだけど、恐怖感は消えなくて触れるのが精一杯だった。
目を瞑り、深呼吸をしてここは大丈夫なんだと自分に言い聞かせる。
「触れるのが怖いんじゃなかったの。すごく震えてるよ」
撫でるような優しい声を掛けてくれるのに震えは止まらない。
「……っ、怖いです。でも、ソラ先輩と離れる方がずっと怖い……」
「だけど、こんなに近くにいたら苦しい思いをするだろ」