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イケないキミに白い林檎を
第30章 林檎の花

起きてからお粥を作ったことしか記憶になくて、昨日のことは空白になっている。

いつから寝ていたのかさえ分からなかった。


「いつもの待ち合わせ時間より帰りが遅かったから心配で電話をして迎えに行ったんだ。
そして、駆け付けた時には乙羽さんの記憶が全て飛んでいた。何があったのか知ることはできなかったけど……」


やはり迷惑を掛けていた。

記憶が全て飛んでいたということは、事故に遭った後と同じ私がソラ先輩の前にいたんだろう。

大切な人の存在を忘れ、名前を呼んであげることすらできない私が……。


「ごめんなさい……。いつも本当にごめんなさい」


もし私がソラ先輩の立場だったら耐えられないだろう。

両思いになってから自分の存在を忘れられて、三年も待たせられて……。

ソラ先輩の気持ちを考えてみたら悲しくなってきて涙が出てきた。

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