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手を繋ごう〜愛憎II〜
第13章 不穏



丁度その頃、榎本豊は夢を見ていた。



バシンッ!!

頰に痛みが伴う。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

アパートの部屋はコンビニの弁当やペットボトルが錯乱し、その中に震えながらうずくまる豊。


母親は、豊がお腹に宿った後に結婚し、丁度5年前、豊の父親である夫が会社の女性と不倫関係に陥り、離婚をしていた。

露呈する前は一心に愛情が豊に注がれていた。


しかし


『すまない!相手に子どもが出来たんだ!別れてくれないか』

そう言って土下座をしてくる父親を母は涙に震えながら、何度も何度も殴っていた。

その後、すぐに両親は離婚。

養育費は毎月父親から払われている。

その為生きていけれて、学校にも通えていた。

しかし、その後から、豊にとっては果てのない地獄が待っていた。

バシンッ!!

体が力によって吹き飛ぶ。

「あんたなんか産まなきゃ良かったっ」

「お母さん、お母さん辞めてっ!」

そう言っても、今度は足が飛んでくる。

唇には血が滴り落ち、体が痣だらけの状態になり、学校の身体測定の時に露呈し、学校と母親で一時は騒然となった。

その後からは体に痣を作るような傷が無くなったが、食事にありつけない日が続き、自分で作っても

「あんたに食べさせるものなどない!!」

と、鍋を床に投げつけられる。

そして、目の前で買って来ていたコンビニの弁当を母は豊の目の前で食べる。

それが、錯乱したごみの正体。

豊は食べることで精一杯だった。

アルバイトもして

半ば隠れるようにして、母に見つからないよう、食事をしていた。

ボロボロと涙が溢れてくる。

少年には限界だった。

毎日地獄のように続く、身体的暴力と、ネグレクト。


玄関でハイヒールを履き、玄関を出て、アパートの階段を下ろうとしている母親を追いかける。


「うわああああああ!!!」

と言う少年の叫び声のあと、母親の背中を押す豊。

ドサッ!!

大きな、体の落下音が聞こえ

母親はアパートの階段の一番下にうずくまっていた。



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