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手を繋ごう〜愛憎II〜
第3章 パニックな朝と懸念

ーーーその時、萌より後ろの席から、萌を見つめる男子がいた。


彼は朝の騒ぎが衝撃的だった。

まだまだ挽回のチャンスがある!
そう意気込んで、半年間萌に接していた筈だった。

(熱烈キスしてたなんて、僕のもえちゃんに……)

ギリッと歯軋りし、教室に少し遅れて入って来た誠に敵意を向ける。




(萌ちゃん、なんで、僕のことを振って、あいつの所に行ったんだ…)



ただの幼馴染のくせに。

(俺はあいつより一緒にいた筈なのに)


最初の時はぎくしゃくしていたけれど、あんなに笑いかけてくれたのに。

(あいつより、一緒にいる筈なのに)





全体練習が終わり、音楽準備室へ楽器を返す時、オーボエをケースに戻す萌に

「萌ちゃん」

「ん?」

椅子に座っていた萌が見上げるように彼の方を向いた。

彼は

「僕が…」

と言いかけた途端、出鼻を挫くように

「萌!」

と、真正面からスタスタ歩き萌の所に向かっている誠がいた。

オーボエケースを、カチリ…と閉め

「どうしたの?まこちゃん」

と言っている萌は、まるで彼を忘れたかのように、誠に視線が注がれる。


誠は、オーボエケースを持ち上げ


「俺が仕舞うよ」

と、スタスタ行く所に

「ま、まこちゃん、良いよ!私が仕舞うよ!」


と言っている姿が日常茶飯事的に繰り返されていた。

最近では、

「ありがとう!まこちゃん!」

に変わっていた萌の様子に、少し怪訝に思っていたのだ。



その度にギリ…と奥歯を噛み締めていた。

1ヶ月前、誠は話そうとするが、萌は視線すら合わせない時期があった。

(これでいけるかもしれない…)

心の中でにんまりしていた。

それなのに……

(まさか付き合うようになるなんて…)

彼は成績が良いが、取り立ててクラスではあまり目立なかった。


誠は授業中、ひょうきんな発言をし、授業を盛り上げてみたり、それでも真面目な顔をして、話を聞く。

クラスの中で目立った存在で、みんなに好かれる存在。
それが誠だった。


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