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第9章 巽 圭吾
紆余曲折あった半生、そこにずっとコタがいた。

コタが居るのが当たり前だった。

寂しい時も、落ち込んだ時も、ずっと居た。
腹が減ると甘えてくるくせに、抱きしめるとヤメロ、って腕を突っ張ってさも迷惑そうな顔をする。

カリカリのエサだけじゃ食わなくて、ウェットフードを混ぜてやると、器用にウェットフードだけを食う。

エサ入れのとこにちゃんと毎日水を入れてるのに、温くなった水は飲まない。水道から出てくる水が好きで、レバーを頭で押し上げて出すことはできるけど、飲み終わったら止める、という概念はないらしく。うちの洗面所の水がちょいちょい出しっ放しになってるのはコタの仕業だった。

スーツに毛がつくから、帰ったら速攻スーツを脱ぐのに、玄関から部屋に行くまでのあいだに足に擦り寄ってくるから、スーツを掛けたら毎日粘着クリーナーでスーツについた毛を取るのが日課。
ウチの粘着クリーナーの消費量は尋常じゃない量だ。

スーツの毛を取るついでに、コタの背中もコロコロしてやる。
コロコロしてやると気持ちいいみたいで、長く伸びて、大きなあくびをする。

それが、もう居ない、って思うと、ぽっかり穴が空いたみたいで。
寂しい、というより、虚ろ、ていう感じだった…



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