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第13章 萩原 隆行
貸切状態、とはいかないけど、人もさほど多くなくて、みんなカップルだから適度に距離を取ってて。
花火が始まる前も夜景がキレイに見えるから、来てよかった、と思った。

普段は俺が右側にいることが多い。右利きの美佳ちゃんがもたれかかるのにちょうどいいらしい。
でも今日は、俺が左側に陣取った。

あえてベンチの左端に座ったから、美佳ちゃんは右側に座らざるを得なくて。
首を傾げながらも右側に座ってくれた。

最初の花火が上がる。

「あ、始まったね!」

「うん。」

「…ねぇ、美佳ちゃん。」

隣に居る美佳ちゃんの手をぎゅ、と握る。

指輪はケースから出して、デニムのコインポケットに入れておいたんだけど、何度も練習したのに左手で、且つ座った状態だと取り出しにくくて。落としそうになって焦ったけど、何とか左手に納める事が出来た。

自分の右手で掴んだ、美佳ちゃんの左手をそのまま持ち上げて、空にかざした。

「?」


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