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第2章 高野 正一郎

田舎に帰って来て、好きな女が出来た。
トキエという女やった。

上に姉さんがおるけどもう嫁いどって。その後に母親が病気でのうなって、父親と二人で住んどった。
姉貴やお袋とは全然違ごうて、優しいし、いつもにこにこと笑うとる。
トキエに比べると、姉貴やお袋の笑い方は、ニヤニヤと下卑て見えた。
トキエと一緒におる時だけが、安らげる時間。
昔、姉貴やお袋を見て、女っちゅうモンは…と思うとった頃は、結婚なんぞ一生するもんか、と思うとったけど。
トキエに出会うてから、考えが変わった。
ガキが男になった、ちゅうのもあるかもしれんけど…

嫁に貰うなら、トキエしか居らん、と思うとった。