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第21章 幸村 昌希
前略

昌希くん、由香さん、お元気にされてますか。

この度はご結婚、本当におめでとうございます。
昌希くん、お正月に、お嫁さんを紹介してくれたこと、とても嬉しく思いました。

何かお祝いをしたくて、考えたのですが、若い人の喜ぶものが解らず…ご祝儀も、かえって気を遣わせてしまいそうで…

このネックレスは、私が深谷の家に嫁ぐ時に持参したお道具のひとつです。
花珠真珠は150年輝く、と言われていて、子供、孫の代まで受け継がれる逸品ですよ、というお店の方の言葉に感激して、どうしても欲しくて父に無理を言いました。
そんな思い入れのある品なので、娘のいない私は、昌幸が結婚したらそのお嫁さんに譲ろうと決めていました。
昌幸は、結婚する前に亡くなってしまったけれど、貴方という忘れ形見の存在が、どれだけ私達の励みになったかしれません。

本当なら、貴方のお母さんに譲っても良かったのですが、清美さんは真珠はお持ちだそうで、もし譲ってくださるなら、昌幸の血を引く昌希くんの、お嫁さんになる由香さんにあげてほしい、とアドバイスをいただき、こうして手紙と共にお渡しした次第です。

不要なら、捨ててください、とは言えません。私にとっては思い入れのある品ですので、大切にしてくださる方に使ってほしいと思います。不要なら、お返し頂ければ、私が死んだ時に棺に入れて貰うようにします。
そちらのご意向も聞かずにお届けする不躾をお許しください。

草々
深谷 千鶴子




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